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俺は、感じたことが口から漏れた。
「ゴーストタウンか?」
サユリが俺の隣に立ち、外を指差した。
「あそこらのビルには、人はいないの。
いるのは、もう少し離れた集落。
畑を作ってるからね。」
「畑?東京で?」
「戦争があって、人類の8割か9割は、死滅したから。食料もつくらないと。」
俺は笑いそうになった。
「今さら戦争だあ?
そんな、馬鹿な…」
「人間は馬鹿なんだから、仕方ないでしょ。」
俺は、サツキさんに聞いた。
「マジ?」
「真面目に。
問題は、なんで精獣を召喚したはずが、タイムスリップした人間が出てきたのか、だわ。」
次から次へと訳のわからないことを言うな。この人達は。
「せいじゅう?って、なんだ?」
サツキさんは、にこ、と笑った。
「見せた方が早いわね。」
いきなり、サツキさんは、喉を鳴らした。
サツキさんの口から、何かが出てくる。
口から吐き出されたモノは、口から出た時点で膨れ上がり、口の大きさの何十倍もの太さになっていく。
サツキさんは、くぐもったうめき声をだしながら、すごい早さで吐き出している。
顔が紅潮しているところを見ると、身体的に何らかの無理をしているのだろうか?
それにしては、苦しそうではない。
毛むくじゃらの何かが、ものの数秒くらいで吐き出された。
毛むくじゃらは、4本の足で立った。虎柄で、ライオンのようなたてがみのある狼、と言う他はないでたらめな生き物だ。
デカイ。俺がまたがっても、平気そうだ。
俺もああやって出てきたのだろう。
「うお?!噛みつかないだろうな!」
俺は、少し下がった。
サツキさんは、ふう、と息を吐いた。
「私が命令しなければ、犬より大人しいから大丈夫。名前は虎獅狼(コシロウ)よ。
触ってもいいわ。」
俺は恐る恐るサツキさんの体に手を伸ばした。なかなか巨乳だ。
だが、話は違ったらしい。
「さわっていいのは、虎獅狼の方です。
私じゃなくて。」
「あ、すんません。」
俺は、それに触ってみた。
動物だ。温かい。
口から出てきたとは思えない。
獣臭はない。
俺は、どこから質問すればいいのかすら、わからなかった。
サユリが、
「とにかく、1度家に戻って、話を整理しないと頭がグジャグジャだわ。」
と、言いながらその動物の頭を撫でた。
サツキさんは、その動物の鼻頭を軽く唇でくわえた。
ズルリ
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