第1章 精獣とは俺ですか

6/28
前へ
/320ページ
次へ
俺は、感じたことが口から漏れた。 「ゴーストタウンか?」 サユリが俺の隣に立ち、外を指差した。 「あそこらのビルには、人はいないの。 いるのは、もう少し離れた集落。 畑を作ってるからね。」 「畑?東京で?」 「戦争があって、人類の8割か9割は、死滅したから。食料もつくらないと。」 俺は笑いそうになった。 「今さら戦争だあ? そんな、馬鹿な…」 「人間は馬鹿なんだから、仕方ないでしょ。」 俺は、サツキさんに聞いた。 「マジ?」 「真面目に。 問題は、なんで精獣を召喚したはずが、タイムスリップした人間が出てきたのか、だわ。」 次から次へと訳のわからないことを言うな。この人達は。 「せいじゅう?って、なんだ?」 サツキさんは、にこ、と笑った。 「見せた方が早いわね。」 いきなり、サツキさんは、喉を鳴らした。 サツキさんの口から、何かが出てくる。 口から吐き出されたモノは、口から出た時点で膨れ上がり、口の大きさの何十倍もの太さになっていく。 サツキさんは、くぐもったうめき声をだしながら、すごい早さで吐き出している。  顔が紅潮しているところを見ると、身体的に何らかの無理をしているのだろうか?  それにしては、苦しそうではない。 毛むくじゃらの何かが、ものの数秒くらいで吐き出された。 毛むくじゃらは、4本の足で立った。虎柄で、ライオンのようなたてがみのある狼、と言う他はないでたらめな生き物だ。  デカイ。俺がまたがっても、平気そうだ。  俺もああやって出てきたのだろう。 「うお?!噛みつかないだろうな!」 俺は、少し下がった。 サツキさんは、ふう、と息を吐いた。 「私が命令しなければ、犬より大人しいから大丈夫。名前は虎獅狼(コシロウ)よ。 触ってもいいわ。」 俺は恐る恐るサツキさんの体に手を伸ばした。なかなか巨乳だ。 だが、話は違ったらしい。 「さわっていいのは、虎獅狼の方です。 私じゃなくて。」 「あ、すんません。」 俺は、それに触ってみた。 動物だ。温かい。 口から出てきたとは思えない。 獣臭はない。 俺は、どこから質問すればいいのかすら、わからなかった。 サユリが、 「とにかく、1度家に戻って、話を整理しないと頭がグジャグジャだわ。」 と、言いながらその動物の頭を撫でた。 サツキさんは、その動物の鼻頭を軽く唇でくわえた。 ズルリ
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加