第八十話 それぞれの目的 (後編)

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闇の中に一つの白い雷光が落ち、その後、闇の霧が晴れると、そこには黄金の光を受けた小さな島が見えたと彼女は言った。 「島だと?……ここから西に?……」 ストーグは、ここから更に西の海域の事を思い出そうとしていた。 「……確か……ここから西は……島などなかったはず……どこまでも広がる海が存在していたはずだ……黄金の光を受けた島など……聞いた事が……」 メルリアは、その光景を思い出しながら、呟いた。 「……島の中には光の戦士達と、妖精が見えました……」 円卓を囲んでいた一人のハルフゥが何かを思い出していた。 「聞いた事があります……ヤシュトー様から……妖精の島なる物があったと……過去の世界に……」 ストーグは初めて聞いた事だった。 「……そんな場所が存在しておるのか……小人のラスハ・イムの伝説ならば知っておるが……妖精の島か……」 メルリアは瞳を閉じたまま涙を流した。 「……そして……私の心は満たされました……とても……理由は分かりませんが……その光に覆われた時……凄く懐かしい気持ちが心の中に現れて……」 ストーグは彼女から視線を外した。 「……そうか……そんなものが見えたか……」 凶兆を示す物でなくて良かったと彼は思った。 (とりあずは良かった……だが……) 今の現状は非常に厳しいものがあった。 (今は……ここを何とかして守らねば……ファリオール……エリーシャ……せめてお前たちがいれば……) ストーグは自身の息子と娘を思い出していた。 (二人が……生きてさえいてくれれば……) 彼は一向に帰って来ない二人の事を諦めていた。 (この世界は……どこまでも闇の霧が続く世界……光など……存在するのか?……) 考えていると、部屋にマーマンの戦士が入って来た。 「族長!偵察に行った者が帰ってきました!」 ストーグは、その者を呼ぶように言った。 「はい!」 すぐに全身ずぶ濡れのマーマンがやって来た。 「どうであった!?」 マーマンの戦士は、円卓の前に立つと、険しい表情になった。 「……奴らは……かなりの数を、あの島に集めているようです!」 島の中、その周囲の海域に闇の種族は集まっていて、見た事の無い魔物までいると彼は言った。 ストーグは椅子から立ち上がった。 「何だと!?」
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