第八十一話 白銀の楽園

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ピュッケの瞳には一体のローレライが映っている。 敵はダークブルーの鱗で覆われ、手には三又の槍を持っている。 ゴレアの館の入り口に足を踏み入れようとしていた。 ピュッケは二人の下に近づいた。 「……えっとね……一人だけ見えた……」 デュランは腰に巻いているベルトからナイフを取り出した。 「ユラト……すぐに行こうぜ……アレク達が苦戦しているかもしれねえ……」 ユラトは覚悟を決め、妖精の剣を鞘から静かに抜いた。 「ああ……行こう……援護を頼むよ……」 デュランは両方の手に投げナイフを持っていた。 「任せろ……すぐに仕留めてやる……」 二人は一気に角を曲がると、敵に向かって走った。 (いた!) (あいつか!) 走って来る二人の人間にローレライのマーマンは気づいた。 「そんな所にいたのか!?」 相手は入ろうとしていた館から外へ戻ると、槍を構えた。 「来い!」 「はああああああ!」 ユラトは剣を振り上げ、敵の下へ走った。 「人間共め!」 ローレライのマーマンは剣を振り上げているユラトの体へ向かって槍を突き出した。 「フンッ、隙の多い奴!」 しかし、ユラトは寸前で止まり、真横へ飛んだ。 「よし!」 敵の突きは何も無い空間を突く事になった。 (フェイントか!) 人間の動きに反応したローレライは突き出した槍を素早く真横に振った。 ユラトは、その攻撃を剣で受け止める。 「デュラン!」 彼に声をかけたが、既にデュランは投げナイフを敵に向かって飛ばしていた。 「はっ!」 ナイフは敵の首元と、瞳に刺さった。 「おまえら!」 デュランは敵に走る寄る。 「やっちまおうぜ、ユラト!」 彼はそう言って短剣を引き抜いた。 「デュラン!やってくれ!」 ユラトは敵の槍を片手で掴んでいた。 「くそう!離せ!」 しっかりと掴んでいたため、敵は攻撃が出来なかった。 「引くか!」 赤毛の青年が自分の下へ走って来るのを見たローレライは槍を、後ろへ下がった。 敵は片目を押さえて走り始める。 「逃さねえ!」 デュランは追加でナイフを投げた。 「はっ!」 ナイフは敵の背中に突き刺さった。 「やっぱ硬いのか!?……先っぽしか刺さってねえ……」 デュランが悔しがっていると、ピュッケが叫んだ。 「おい、デュラン!後ろを見ろ!」
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