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俺の耳に届いた看護婦の悲鳴が、薄れてかすれて行く。
看護婦は、突然飛んだ俺の頭と、自分の上体に付いた俺の血に驚いたようだ。
そして、上向きで倒れている俺の胴体上には一人の女が座っている。
数秒前までの俺はベッドで寝ていた。
だが、看護婦の声で目を覚ますと、俺の真っ正面には見知らぬ女の顔があったのだ。
俺の胸元にいる女の体重と体温は、何故か感じられない。
俺に体温計を手渡そうとしていた看護婦は、その女を注意しようとはしない。
まるで見えていないかのようだ。
女は冷笑と共に1つの指輪を見せた。
「地獄が見える指輪」と女が言った後、俺は首の違和感と共に大量の鮮血を噴出させていた。
俺の目が自分の胴体を映し、窓枠を映し、風を受けながら指輪を映す。
指輪の先には凍えるような瞳の女がいて、黙って俺を見ている。
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