病室

4/10
前へ
/10ページ
次へ
(この女が元凶だ!) 思って間もなく、俺の視界に桜の木が映り、ぶつかると思った瞬間、頬が枝に刺し貫かれた。 「がはっ…」 俺の鼻や口から異物が飛び散った。 人は… 首を切り落とされても、1分40秒間は生きている。 それはもう… 俺には避ける事の出来ない[死の訪れ…] 桜の木は病院の2階並の高さだと言うのに、その女は今、俺の目の前に立っている。 女の肌は透き通る程に白く、風になびくロングヘアーと豊なバスト、体型が分かりそうな程に薄い衣装をまとっている。 (陽気な春の風が見せた、白昼夢であって欲しい) 夢や幻… これが現実であって欲しくない。 けれど俺の口や目は、だらしなく開き放しだ。 かすれ行く意識の中で、俺の舌が掴まれて引っ張られ、指輪が乗せられる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加