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桜の枝からは、けっして逃れられない男の魂が、今宵もまた「活きよ。活きよ」と、水霊に囁かれ…
死亡して骨と化しても、肉体が再生して脳と魂が生かされ続ける。
枝に縫い付けられた男の魂が見えているモノは、太陽や月の光が届かない暗黒世界、世界の果てにあるとされている地獄だ。
超高熱の炎と悪臭を伴った大風が、常に男のまわりを吹き荒れており、一番嫌な過去の記憶が永遠と繰り返される。
逃げる術等、どこにもない。
嫌でも思い出させられた自分の罪の重さに対して、只ひたすら、男は嘆き苦しむ事しか出来ない。
(ルウ…許してくれ…ルウの友達よ。俺を許してくれ…すまなかった…ルウ…)
それは…
時は今から3年前、男は看護婦と共に一人の女を殺害した。
色白で髪の長い、とても美しい女で、疑う事を知らない純粋な心の持ち主だった。
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