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「隣のクラスで血吐いて倒れた人いるんだって!」
「えぇ?! 何それ!! 教えて! 教えて!」
馬鹿な女達が脇目を振らず、ぎゃあぎゃあと騒いでる。朝の教室のよくある光景とはいえ、もう少し朝から落ち着きと清楚が欲しいものだ。
「うっす! 溝口。なぁ、お前も聞いたか? 横のクラスのデブがさ血吐いて倒れたってよ。」
全国の女子に謝らないとならない――馬鹿な男子がここにいた。
「お前、何世界が終わったみたいな顔してるんだよ。まさか、お前……そうか、好きだったんだな。ごめんな。変なこと言っちまって」
俺は拓也を殺気の満ちた目で睨みつけた。
「おいおい、お前そんな目で見んなよ。怒んなって!」
察しが良いのか俺に謝ってきた。こいつにも猿並みの知能はあるようだ。
「おはようございます!! 西園寺さん。西園寺さんも知ってますか? 隣の教室のデブが血吐いて倒れたって」
馬鹿な拓也は学年一、容姿端麗、文武両道の西園寺さんに話し掛けていた。鼻の下を猿のように伸ばして。
「知ってはいますけれど、あんまりそんなふうに言いふらすのは可哀想ですので、やめてあげた方が良いと思いますよ」
「おーい、みんな!! 西園寺さんが言うから、もうこの話は無しな。わかったなお前ら」
さっきまでのことが無かったように、別のことをそれぞれ話していた。
「皆さん、ありがとうございます」
彼女の笑顔に俺は思わず見とれてしまった。他の男子もほとんど同じだった。
傍から見れば、誰もが彼女を『良い人』だと思うのだろう。
でも、俺はどうしても良い人とは思えなかった。
ーーこの学校は傍から見れば平和だ。
高一から同じクラスで一年間過ごし、特に目立ったいじめもなく、誰もが表向きは仲好くしている。先生だって気付かないだろう。
――このクラスのいじめを。
ここ数年で、スマートフォンやタブレット端末の普及率は爆発的に増え、機械系に疎い俺でさえも、携帯をスマホにしたくらいだった。
それらの端末にはアプリケーションと呼ばれる様々なサービスがある。ゲーム、テレビ、音楽からSNSと端末一つあれば大体のことはできる。
だからなのか、連絡手段もメールよりSNSのアプリなどで連絡を取ることが多くなった。
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