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俺は慌ててアプリを閉じ、ゲームの画面に切り替えた。
「ふぅーん、お前もゲームやるんだな。ってかリアルにやりこんでるな。引くわ」
拓也にパズルゲームのランクを見られたせいで、リアルに引かれるという屈辱は受けたが、バレなかったから良しとしようと何度も言い聞かせている自分がいた。
拓也がいなくなってから俺は再び携帯を開き、コメント内容を確認していた。
「バレずによくやり過ごしたな。ってか、お前もゲームやるんだな。ナルシスト」
俺の腐れ縁の一人、秀明からだった。ってか、ナルシストは余計だ。
他のコメントも驚きの声や、何のゲームか教えて欲しいなどのたわいもない会話であった。
これだけだったら――ただの普通のグループなんだけどな。
そう思ってしまったせいか、軽い喪失感に襲われた。
けど、自分は何も言ってないので、気にするのをやめた。
「そんなことしてて……楽しい?」
ふと、後ろから声がした。
驚いて後ろを振り向いたが、誰もいなかった。
そして、体中の血が凍ってゆくような独特な寒気を直に感じた。
正直、動揺を隠しきれなかったが、周りに悟られるのもしゃくだと判断した俺は平然を装いながら、元の態勢に戻ろうとした。
だが、俺の左頬に誰かの人差し指が当たっていた。それは幼馴染の亜美花だった。今日は本当に運が悪い。
「おはよっ! まいだーりん♪ 今日も良い感じの冷め具合ですな」
こいつは普段から俺にしつこく付きまとってくる変わり者だ。
俺のことをダーリンなどと言い、付き合っていると勝手に言いふらしている。もちろん、付き合ってなどいない。
「ねぇ、ジュース飲む? 私との間接キスのサービス付きだよ?」
「なら、余計にいらねーよ」
「もう、照れ屋なんだから! でも、そういうとこも好きだよ」
勘弁してほしい。お前のせいで、こっちは朝から冷や汗もんなんだ。
「なぁ、お前クラス違うだろ。とっとと帰れ」
ドブネズミを追い払うような形で亜美花を教室の外まで押し出した。
「また遊びに来るからね。照れ屋のだーりん♪」
「もう、来んな。じゃあな」
これで邪魔者は消えたと思い、安心して席に着けた。
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