第16話

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ふと、左手の薬指にはまった指輪が目に入り、 あたしは何も考えずポロッと口にした。 「和也さんは、どうしてあたしを抱かなかったのかな…」 服を脱がせて、キスマークをつけただけで。 「できなかったんだよ、きっと。 もしかしたら、そのつもりだったのかもしれない。 でも、欲しいのはおまえの身体じゃなく心だと、 自分で気づいたんじゃないかな…」 新谷の真剣な声が、すごく胸に響いた。 「俺も泥酔したおまえを抱こうとしたけど、結局、できなかったし」 「へ? 何それ?」 初耳、ですけど?
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