1295人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めると、そこは自分の部屋だった。
最下荘ではなく、自分の家の、自分の部屋。出て行ったときと、あまり変わっていない。少し片付けられているぐらいか。
「……本当に」
何ヶ月放置しているはずなのに、部屋は綺麗なままだった。ベットも、埃くさくない。洗っておいてくれたのだろう。いつ帰ってくるかわからないのに、それでも、この部屋の整理はかかさなかった。
お手伝いさんだろうか? いや、違う。そうじゃないと信じたい。あの両親が、片付けなんて言葉のないあの二人が、不器用に、丁寧に、自分を思って、行ってくれたのだろう。
ベットから片足を下ろし、続いてもうひとつも下ろす。立ち上がると、少しめまいがしたが、それだけだった。今何時だろうか。カーテンがしまっている部屋は暗い。電気が必要なくらいだから、もう夕方か夜かだろう。時間を考えるとあまり眠っていないらしいが、心持ち、寝すぎた感がある。昨日寝ていなかったのだが、眠気はまったく残っていない。
「……まあ、なんというか、さすが親父」
これも魔術なのだろう。快眠魔術といえばいいのだろうか? 睡眠時間が短いあの人なら必要とわかるが、それを他人にかけるとは、むちゃくちゃな人だ。同じ眠らすにしても、詠の構成からなにから変えなくてはいけないはずだが。
「そのあたりが大人と子どもの違いってことで」
少なくとも、俺にはできない。
自分の部屋を出て、リビングへいく。神は、また音量の絞ったテレビを見ていた。ソファに座りながら、ここに来たときとほとんど同じ体勢だった。
最初のコメントを投稿しよう!