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「……どうしたんですか? 大輔さん」
風護 慧は驚く。今日来る予定は聞いていない。いや、聞いていなくともいつだってウェルカムなのだが。だから彼は笑顔で近寄った。彼が来ているということは一緒に彼女が来ていることだってありえるからだ。
小走りで彼に歩み寄る。けれどその歩幅と笑顔は大輔の姿がはっきり見えるのと反比例して小さくなる。
誰ですか? と聞いてしまいそうだった。雰囲気がなにからなにまで違った。ウォンもそれに気付いたようで、ただ一度唸った。
「あの……」
言葉が見つからない。対人経験が乏しいので、こんなときどんな言葉を投げたらいいのかわからない。
「えっと……、ようこそ? お久しぶりですね? あう……、お茶でもいかがです?」
「慧さん」
「は、はい」
呼びかけられて、怒られると思ってしまった。大輔の声は暗かった。重かった。
「な、なんでしょう?」
身構える。謝る準備はできていた。
大輔はさして興味がないように言った。
「おはようございます」
「……おはよう、ございます」
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