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「ただの防寒魔術だったら、並みの魔術なら関係なく、奴は弄ったはずだ。過去を変えるというのは、自分でどうにかできるようなもんじゃない。どうにかしようとする意思さえ、変えてしまうのがそれが。だから、お前の魔術は優秀なんだ。過去の改変を拒否する、それができる魔術なぞ、俺も知らん」
「……じゃあ、俺にもできるはずないだろう」
「親を超えられるのは、子どもだけだ」
そんなわけない。そんな簡単なものじゃない。
あの人が、そうしたのだろう。
無名おじさん。時間旅行者。
あの人は、わざとそうしなかった。大輔の過去を変えないように、考えを持ったままのように、将来”落ちる”ように、そして、いつかこの矛盾に気づけるように細工をしたのだろう。
防寒魔術を見抜けた人なら、優秀と言ったあの人なら、あの魔術が別のものの影響を和らげていると、わかったはずだ。
「お前は不完全だと言ったが、俺もそう思う。だから、近いうちにまた過去の改変が起こるだろう。そのときは、もっとしっかりとした基盤の上で、計画が行われるはずだ。そのときは、お前も、抵抗なく”落ちる”ことに恐怖を抱くようになる。そして、俺も、例外なく、そうなるだろう」
「あんたがまだ覚えているのは、魔術のせいじゃないのか?」
「言っただろう。俺は過去改変の逃れる魔術を知らんと。これは時間旅行者が、わざとそうしているからだ」
「なるほど。じゃあ」
「”落ちこぼれ”がなぜ必要か。だな」
「……ああ」
話を聞くと、その計画を早めてしまったのが大輔だとはいえ、その前からその計画はあったようだ。”落ちこぼれ”。まだ意味が薄いとはいえ、急に必要になった理由。まだそれが語られていない。
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