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「単純だ。奴らは、外れたからだ」
「なにに?」
「流れに」
流れ。何度聴いたかわからない単語だ。
「この世の普遍的な流れ。それに逆らうが故に、流れから外れる。だから”落ちこぼれ”として、隔離した」
「それは、魔術師に生まれたら魔術師にならなきゃいけないっていう、アレか?」
「そうだ。それを破ると、外れる」
「……よくわからないが、それは本当にいけないことなのか?」
魔術師に生まれたって、夢を見たっていいじゃないか。それさえ許されないなんておかしい。なぜいけない。あの時間旅行者は、猫がトラになるようなものだからと言ったが、にしても、種族が変わるわけではないのだから、いいじゃないか。
「この考えはおかしいか?」
「いや、おかしくない。だから、その考えを固定したんだ」
「固定?」
「当たり前のものだと、思い込ませた。そう過去を操作して、その考えが遥か昔からあるように仕上げたんだ。疑いがないように。たとえ疑っても、そのあとはまた納得できるように、逆らうことを忘れるように、仕組んだ」
変だといっても笑い飛ばされるように。仕方ないものだと、そう心に植え付ける
「なんの……ために」
「これ以上、この世界を壊したくなかった」
世界。壊す。その言葉がいきなり出てくるとは思わなかった。
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