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「最下荘の役目は多い。だが、一番大きいのは、保護だ」
最下荘に入居し、そこで生活している間は、国からお金が出る。それはまさに『保護』だった。わざわざ”落ちこぼれ”を雇いたがる会社はいない。だから、普通にしていれば人並みの生活が送れなくなってしまう。だから、国が保護してくれているのだと思っていた。
だが、ここまで聞くと、『保護』の意味がまるっきり違ってくる。国が生活を保障する意味も、変わってくる。
大輔の頭に、最下荘で暮らしている人の顔が、浮かんでは消えた。”落ちる”。彼らは本当の意味を知っているのだろうか。大家さんは、自分の本当の役目をしっているのだろうか。
「……なんで、”落ちこぼれ”を蔑む対象にしているんだ」
「ん?」
「”落ちこぼれ”を避けるようにする意味は、あったのか」
「理由の一つは、お前みたいな者を生まないようにするためだ」
神が大輔を指差す。
「『自ら進んで”落ちこぼれ”になる者』を生まないようにするためだ」
「…………」
「”落ちこぼれ”を特別扱いすれば、自らそれになろうとする輩が出てくることは明白だった。”落ちこぼれ”はある意味治外法権的なものを持っているからな。だから、安易に目指さないよう、下に来るように操作している」
上に行きたがる人はいても、下に行きたがる人はいない。大輔のように、ある種の強い理由を持っていなければ。
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