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「もう一つは」とそこまで言って、神は一瞬言うのを躊躇った。「感染を防ぐためだ」
「感染?」
「異常は異常を引き起こす。”落ちこぼれ”は、新たな”落ちこぼれ”を生む可能性があった。だから、最下荘があるんだ。一箇所に纏めれば、把握も容易い。それに、”落ちこぼれ”はその性質から疎外感を持っている奴が多かった。仲間がいるとなれば、そこを居心地よく感じるだろう」
神は綺麗な言葉で締めようといたが、大輔の頭には隔離の文字が浮かんでいた。腐ったリンゴは他のリンゴもダメにする。だから取り除かれ、集められる。
それが”落ちこぼれ”だというのなら、あまりにそれは酷すぎる。
「”落ちこぼれ”は、”落ち”たくて”落ちた”わけじゃないんだろう」
「ああ」
「なのに、そんな扱いになるのかよ」
”落ちこぼれ”が生まれもったものであるなら、それは本人の責任ではない。なのに弾かれる。”落ちこぼれ”の中には普通に生活したい人もいただろう。異常に気付くまでには仲の良かった友達もいただろう。それらを全て奪っていったのだ。
誰が悪いわけじゃない。これまで積み重なってきたものが、溢れただけだ。
運が悪かった。
神様に選ばれてしまった。
たったそれだけのことなのだ。
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