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「……この先、過去を変え続ければ、”落ちこぼれ”への対応は変わるかもしれない」
「…………」
「”落ちこぼれ”なんて呼び方ではなく、別の単語に変わっているかもしれない。”落ちこぼれ”が新たな種族としてまとめられるかもしれない。動物人間がそうだったように」
動物人間。脚斗がそうなように、動物と人間の両方を持つ種族。ケンタウロスや半魚人など、半分半分の性質を持つものや、人間と猫というように完全に姿を変えられる種類の動物人間もいる。
「あれは後付けだったのか?」
「もともとそういう種族はいた。だが、人間と動物の二つの顔を持つ種族は現れなかった」
俗に言う『完全体』だ。脚斗は、人間と猫との完全体。最下荘で会ったとき初めて完全体を見たように、まだ数は少なかったはずである。
「”落ちこぼれ”と見るか、進化と捉えるか、まだ審議は続いているがな」
「……そうか」
「そうなれば、もっと種族は増えるだろう。あの愛とかいう女性ももしかしたらーー」
ーー愛?
「ちょっと待てよ。愛は人間だろ? なのになんで新しい種族になるんだ?」
愛が最下荘にいる理由は管理人だからだ。”落ちて”ない。彼女はなにからも外れていないはずだ。
神の顔にわずかに同情の色が浮かぶ。「……最下荘に、普通の人間を入居させることはない。”落ちこぼれ”か、本当に保護したほうがいいと判断されたものだけだ。あの治癒能力者が、それに当たる」
療。確か、彼があそこにいる理由は親友を見殺しにしてしまったからだ。それ故に力を使わなくなってしまった少年。
最下荘は保護のために作られたと神は言った。あそこに最初に入居したときの療は酷かったとも聴く。”落ちこぼれ”に混じってもわからないほど、異常の中に飛び込ませてでも保護の必要があった。
だから、彼はあそこにいるのだ。あそこにいても平気なのだ。
それほどまでに、傷ついている。
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