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「あの二人は、『突然産まれた』」
なにもないところから、急に。0から1へと。
「彼らに親はいない。知り合いもいない。血縁関係もいない。どれだけ過去を遡ろうとも、彼らの祖先となり得る人物にはたどり着けない。彼らは、彼ら自身が原始なんだ」
脚斗のように進化でもなく、いきなりそこに誕生する。無から有を生み出す点では大輔の魔術も似たようなものだが、それだって魔力という素があり、言葉で肉付けして誕生させている。
完全な無から有へと変えるのは、不可能に近い。
彼でなければ。
この世界を作ったという、彼。『本物』の神様でなければ。
「彼女はいまのところ、人間だ。ヒトだ。俺が宣言してやる。神を従える少年の方も同じだ。人間だ。人間以外ありえない、純粋な人間だ。だが、”これからはわからない”」
人間は無限の可能性を持った種族だと聞いたとこがある。それも彼らの成り立ちからすれば当然だった。
すべての可能性を少しずつ持った種族。だから、ひょっとしたきっかけで覚醒する可能性がある。魔法使いに、予知能力者になれる可能性がある。
だが、愛は、どうなるのだろう。
彼女の後ろには道がない。なににもなかった場所にいきなり立っていたようなものだ。道ではなく、点なのかもしれない。後ろも前もないのかもしれない。彼女はなんの縛りもなく、どこへでも行ける。
なににもなれない。その代わり、なんにでもなれる。
神の言った恐怖の意味が少しわかった気がした。
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