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「ここまで聞いて、ひとつ、訊きたい」
大輔が目をあげる。神が誰かに意見を求めたことなどなかったからだ。
「この計画はうまくいくと思うか」
「…………」
「過去を変え、『落ちこぼれ』が当たり前になり、世界の崩壊は止まると思うか」
「いや、思わない」
神の問いかけに、大輔は即答で返した。即答で返せた。
「ゆっくりと壊れていくだろうな。それしか考えられない」
神は笑い、そして「俺も、同感だよ」と小さく呟いた
「もう駄目なんだよな。いや、正しくなっていくのかな。正直な、俺はもうわからなくなってるんだよ」
神が年相応に見えてくる。自信に満ちていた姿はなくなり、一回り小さくなったようにも思える。
老いたなあ、と、そんなことを大輔は思った。まじまじと顔なんて何年ぶりに見ただろうか。こんな姿を見たかったと、今になって気が付いた。
「この先、どう足掻いたところで結局は『人間』のようなものは生まれる。それはもう止まらないだろう。ゆっくりとゆっくりと増えていく。そして、俺たちみたいな能力者は消えていくだろうな。『人間』に駆逐されるんじゃなく、自然と生き残れなくなっていく。いつの日か、いつかの未来は人間で溢れた世界になっているはずだよ。そんで、俺たちみたいな生き物がいたことは忘れられてくんだ」
「それは、あまり想像できないな。人間だけの未来は」
「きっとくるさ」
神は見てきたように言い切る。「魔法なんて要らないんだよ。あってもなくても変わらない。神様もいたら役に立つが、いなくとも支障はない。ここはそんな世界だ」
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