第1章

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500万円。 払えない額ではありません。 この年まで正社員として働いてきましたから、そのぐらいの蓄えはありました。 けれど、日本で費やした不妊治療の約5倍の費用です。 100万円かけて行った不妊治療の結果、私はいったい何を得たのか。 大きな空しさと絶望だけではなかったか。 不妊治療をしなければ知ることのなかった苦しみを、より多くの大金をかけて、もう一度体験することになるのではないか。 一言で言えば怖いのです。 もちろん、多額の治療費の心配もありました。 語学は達者ではないので、海外での滞在・治療に不安を感じたのもあります。 それほど連続して仕事の休みが取れるのか、という問題もありました。
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