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世の中、不平等で不公平だ。
あたしは、女の子。れっきとした、女の子。なのにも関わらず、初対面である男からは鼻で笑われたり避けられたり。他の女の子には、口に入れた砂糖菓子が口の中で消えて甘い味を残すような蕩(とろ)けるような微笑みで腫れ物を扱うように優しい。あたしには、氷のように冷たい眼差しで汚物を扱うように顔や目を背(そむ)ける。
あたしは、生まれた頃から貴族だった。礼儀作法も全て教わった。学園でも、上位で。才女なのに。女の子なのに。どうして、優しく扱ってくれないのだろう。
仕事には厳しい父様は、あたしを『可愛い』と言ってくれる。作法に厳しい母様は、あたしを『可愛い』と言ってくれる。 … 同じ日の同じ時間に生まれて、数秒の僅差で後に生まれた事になった妹。妹だけは、父様も母様も『可愛い』だけではなく『美しい』とも言う。男は皆妹にだけは優しい。使用人も、他の貴族も、教師も、成績の良いあたしより、成績の悪い美しい妹を優先する。
世の中は、不公平で不平等だ。
見た目『美しい』だけの妹は、勝ってしまう世の中。欲しいモノは全て手に入れる妹。飽きたら捨てる妹。人は飽きられても、蜜を求める蝶のように、妹に集(たか)る。
性格が最悪な妹でも、見た目で判断する。
そんな妹が、あたしは好き。いつか崩れて這いつくばる妹を、間近で見られる立ち位置にいるから。
でも、本音は悔しい。
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