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  あたしは、過去の記憶を持ったまま生まれた。つまりは、転生した元異世界人。転生前は、あまり覚えていない。確実に覚えているのは、闇の中で一人きりで泣いてた記憶だけ。 孤独な少女。今も孤独を感じている。父様も母様も独り占めする妹。妹は、姉を嘲笑う。あたしと二人きりになった時に本性を出す。 『瓢箪のような体型。私には、なれない。憧れる体型。だけど、なりたくない体型。私は美しい。皆が『可愛い』というのは、言っておかないと駄目だらうと思ったから。』 それぐらい、判っていた事。あたしは、幼子のように容易く単純に喜ばない。 『姉様?貴女は、私を輝かす為の飾り。』 … 『飾り』?判っていた。パーティーでも、何故かお下がりのドレスだった。妹だけは、真新しいドレスだった。 判官贔屓(はんかんびいき)。異世界での言葉。源義経という弟には、優秀で頼れる武骨な兄がいた。源頼朝は、後に幕府を作る。弟は兄よりも美形で優秀で、誰もが放置せず、ついつい手を貸してしまう。つまりは、贔屓。どの世界も、見た目『美しい』モノには優しい。贔屓する。兄は、贔屓される弟が憎たらしい。あたしは、チヤホヤされる妹が憎たらしい。 礼儀作法も、料理も、全て学んだ。水面下で、魔法も学んだ。学園では上位の成績になると、訓練場も図書室も貸し切りが可能になる。あたしは、訓練場では武術や体術等魔法以外を、図書室では魔法の勉強以外に今後役に立つだろう事も勉強した。 独り暮らしが出来る程のレベルになる迄、徹底的に。誰も気付かない、知らない。妹しか見ていない人は、気付かない、知らない。だから、都合が良い。  
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