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  『月の日』の早朝。何時ものように、『イズム』と『イスト』は同時開店する。その『イズム』の店側に、ギルドマスターが来た。ギルド員を引き連れて。 重々しい空気の中、少女は店内に現れる。 ギルドマスターの少女を見る目は、冷たい。 「お前、裏にも『イスト』って名前で出店してるだろ。知らないだろうが、彼奴等は、獣人だ。いつ死ぬか判らない、薄汚い連中だ。お前、国を敵に回すつもりか?処罰に値するぞ?」 ギルドマスターの半ば脅迫に、狼狽える素振りを見せない少女。 「来ると思っていた。」 少女は、そう告げるや否(いな)や床を靴の爪先で軽く叩く。 『コツ』と音が鳴るや否や、建物が一瞬で消える。音もなく、崩れる事もなく、椅子や机も壁も建物ごと消える。座っていた人は、転(ころ)げて腰を痛めていたが。ギルドマスター達が呆然とする中で、少女は煙のように消えていく。 「見た目で判断する貴殿等が悪い。本日を以(もっ)て国を出る。この国で店は出さない。頼まれても出さない。納品していた商品は回収する。次に出会う時は他人の振りをする。皆様に厄(やく)あれ。」 少女は、消える寸前に告げる。 少女が消えたのを見たギルドマスターは、我に返る。そして、慌ててギルドに帰れば納品していた商品は一気に消失していた。確認していたギルド員に聞けば、煙のように消えていったと言うではないか。まさかと思ったのか、今度は貧困街に行く。すると、貧困街は無人と化していた。誰もいない、もぬけの殻。 混乱していく、国内。もう、あの店は消えた。この国で出店しないと言ったらしい。 人々は、嘆き悲しみ、そして同じく消えた者達を羨ましく思っていた。きっと一緒にいるだろうから、と。そう思えて仕方なかった。  
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