2/16
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
  目敏いギルドマスターを誤魔化すには、誤魔化す為の物が必要になる。 犯人がなかなか見つからない事件とか、心理戦を伴う事件とか。然し、この世界に、頭脳戦や心理戦を伴う事件は発生しない。リンが起こすなら未だしも。然し、彼女は基本的に面倒臭がり屋な性格をしている。足のつく事件や、良心が痛む事件は起こすつもりもない。霍乱(かくらん)や修羅場なら、野次馬根性で本音は嬉々として仕掛ける側に就(つ)くかもしれないが。どちらにしろ、ギルドマスターの目を欺(あざむ)かなければならない。 この日、『月の日』に『ミーミルの泉』は薬を販売する日。翌日の『火の日』は休店日になる。二日間、『水の日』『森の日』のメニューと、『金の日』『土の日』『光の日』に使う材料等の下拵(したごしら)えをする。時属性の魔法と創造属性の魔法を使って。狡いが仕方ない。リンは、一人で店をやっているから。従業員は雇わない。明らかに、トラブルに巻き込まれる予感がするから。 その二日間の中で、使い魔達には味見という仕事もある。店の客の殆(ほとん)どは、獣人だからなのだけれど。 たまに、様子見に来る神様にも味見という仕事をして貰っている。リンが作る物に興味津々な様子で。天界から見るより、間近で見たいらしくて。 今、リンが作っているのは、『金の日』に販売する調味料作り。塩は噴水で作る塩の結晶で事足りるが、ギルドマスターの目を欺かなければならない為に別の塩を作らないといけなくなったから。 リンが被っていた、顔に包帯がぐるぐるに巻かれたように見えるマスクさえ見破った目。噴水の事も、バレる危険性もある故(ゆえ)に塩を作らないといけなくなった。  
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!