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  その箱の側面には、小さく『ミーミルの泉』とデザイン描きされていた。中には、塩の粉末。もう一つの箱には、小さな硝子製の箱が二つ入っていた。一つは、赤い色をしたペースト状の塗り薬。もう一つは、小さな鏡が二つ入っていた。赤い色をしたペースト状の塗り薬は、勿論怪我に塗る薬。鏡は、トパーズに似た鉱物の黄玉とルビーに似た鉱物の紅玉を薔薇に見立て、隙間を埋めるように葉の形にした翡翠に似た緑玉を散りばめ、材質はこの世界にはないので創造魔法で出したステンレス製で、鏡を填めた物。 「この薬と塩は、作りました。販売もしています。この鏡は、非売品ですが、鏡を通して二人と顔を見ながら会話出来るようにした物です。」 そう言って恥ずかしくなったのか、言い逃げの形でリンはその場から転移した。 後(あと)に残った二人。箱にデザイン描きされた店名は、二人がいる国でも有名な国にある、更に国よりも有名な店で。国は、その店の店主が建立したという逸話も有名な場所。その店で作られる商品は、素晴らしい物ばかりでも有名で。その店の店主が、リンだと知った二人は娘を光栄に思った。そして、元気なのが判ったのと二人に残した鏡に隠された意味を知るや否や涙を流した。 二人に残した二つの鏡。異世界では、テレビ電話に似ている。 その鏡には、照れ隠しの為言えなかった事が隠されていた。話したい時も、会いたくなった時も、鏡を通せば、話せる。会える。という意味が。   その日の夜。御機嫌な二人に気付いた、リンの妹。御機嫌な理由も話してくれず、有名な店の薬を持っている理由も話してくれず、事情や理由も知っている使用人さえも話してくれず。妹は、悔しがっていたらしくて。夜。リンは眠る寸前迄鏡を通して、両親と話していた。  
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