15/15
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
  世界樹に説明し許可を得たリンは、ラートを両親のいる部屋に転移をした。両親に、今回の事を話した。ラートが利用されただけと知ると、母親は涙を流す。 「気付かぬ母を許して … 。」 そう言いながら、ラートの髪を撫でる。 「妹は知らずに利用されていた。双子の姉として、真っ先に気付く者なのに。不甲斐ない姉で、ごめん。」 ラートの両手足についた鎖の痕に、赤い色の塗り薬を塗る。 見る見る内に、痕は消え癒えていく。 「心に出来た傷は、薬では治せない。時間掛かるだろうけど、少しでも傷の痛みを和らげたい。」 リンは、ラートの腕を軽く触れる。 (細い。ろくに食事も与えていないんだろうな、腕が細過ぎる。魔力だけで動いている人形のように扱われたんだろうな。もっと早く気付けば良かったよ、畜生め。) 不甲斐なくて、妹を助けられなかった己が憎たらしい。 『何時から?』今考えて思い出されるのは、表情や動作が止まる時があった事に気付く。心当たりがありすぎて、だけど気付かなかった。周囲ではなく、妹を良く見れば良かった。後から湧いて出て来るのは、良心の呵責と後悔と反省と謝罪ばかり。 (人間観察が趣味だったのに、人の目を気にしていたのに。この世界に転生して慣れ過ぎたからか、人間観察を疎(おろそ)かにしていた。注意して観察してれば異変に気付いたかも知れない。迂闊さが目立っている。双子は、他と違って以心伝心。何も言わなくても、判り合えるもの。己が情けない。) リンは、涙を流した。両親の前で、初めて泣いた。口唇を噛み締めて、声を押し殺して。  
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!