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  当のリンも、多少は恋の経験はあった。然し、全て惨敗。 惨敗理由の大半は、告白する前から容姿で惨敗と妹に取られた事。 初恋の相手も、妹を好きになった。好きになった相手は、必ず自分を馬鹿にし容姿を嘲笑い、尚且つ妹と比較して妹に惚れていく。それを両親は知らない。 報告すれば良いのだけれど、口にすれば敗北を宣言するようで、小さな誇りは傷をつける。未だに妹に対して、コンプレックスを抱いている。もう既に、妹より美しくなっているのに。リンは気付かない。妹は、リンに負けたと思っているのに。 曖昧な関係。曖昧な結果になる話し合い。不毛な話し合い。リンとしては、生じた問題をクリアしたい。 口下手でもあるリンは、先ず両親宛に手紙を認(したた)める。この世界では、無属性と似た空間属性のボックスから幾枚かの便箋と封筒を取り出した。妹に先程から見られているのを意識しながら、便箋に報告を書き連ねて封筒に入れる。そのまま、両親の元へ転移で飛ばす。 次に、リンはパニーニを作り出した。パニーニは、パンを使う。先に作ってあったマフィンに似たパンを一つ用意する。具は、予め作ってあった照り焼きの肉と野菜類。マフィンに似たパンを横半分に切って、具を挟みケチャップを塗る。予熱したパニーニプレートにセットして五分焼いて出来上がり。縁を竹串で刺しながら取り出して、そのまま使役魔召喚の魔方陣を簡易的に描いた紙と一緒に妹の元へ転移で飛ばした。 「使役魔を召喚しな。」 リンなりのお節介であり、小さいながらも譲歩となる。 家出してから、一度も面と向かって顔を合わす事がなかった為に、気恥ずかしかったのが主な理由なのだけれど。  
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