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「似合わないな……あ」
ソファーの前で呟き、はたと気付く。このまま血塗れの葉月が座ればソファーが汚れてしまう。せっかくの趣味の良い調度品なのだから、汚してしまうには惜しい。
「……めんどくさ」
ぼやきながらも、葉月は所持しているボックスの一つをタップした。
以前、陸野原大学附属第三研究所で繰り広げられた戦闘の最中。絶対正義員を拘束する際に使用したロープのように、葉月のボックスにはいくつかの道具が入っている。
ボックスを包んでいた黒い板状のエフェクトが晴れた後には、白い布が現れた。布をソファーにさっと敷いて、ようやく葉月は疲労に重たい腰を下ろす。
「いっ……た」
呻き声を漏らしつつ、更に別のボックスを取り出して解放する。現れた救急箱を開いて葉月は応急手当てを始めた。
体のあちらこちらに怪我はあるが、早急に対応すべきは二つ。決定打にもなった、肩から脇腹にかけての傷と、勇次郎が「金盞花」を発動した際に受けた腹部の打撲だろう。
「うわ、グロ……」
はらりと、切り裂かれた戦闘服を捲れば、一面に広がる血の色。今もじくじくと熱を持つ傷口から滲み出すそれは流れて服に擦れて全面をまだらに染めている。その奥には内出血の、皮膚一枚を挟んで濁った赤がへその辺りから胸のすぐ下まで覆っている。
自らの有り様に頬をひきつらせながら、葉月はそろそろと傷口の消毒を始めた。
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