第一章

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『あのさぁ、勇次郎』  腰に手を当て仁王立ちをする明人は、険しさの中にも呆れと配慮を含有した――まるで親のような目をしていた。 『無理して笑わなくていいよ』 『……え?』  無理をしなくていい。笑わなくていい。それまで知らなかった言葉に、勇次郎は頓狂な声を上げる。  理解出来ないものは信用ならない。指で弾かれた額を押さえ、涙の滲んだ視界で、苦笑する明人を睨み付けた。 『どーゆうこと……わっ』  そんな様子には構わず、明人は勇次郎の頭をくしゃりと撫でた。そして、その手を懐に差し入れ―― 『だって、それは俺の役目だから。勇次郎みたいな人間には、表情で……心で嘘を吐かないでほしいんだ』  再び勇次郎に伸ばされた手のひらには、黄昏の空のように暗い黄色の端末が乗っていた。  端末には何やら送信画面が表示されており、送信先は「絶対正義OfficeNo.2」と表記されていた。 『これ……絶対、正義って』 『そういうこと』  猜疑と警戒、少しの安堵に揺れていた勇次郎の瞳に理解の色が浮かぶと同時に、じわりと理解から滲み出た不安がそれまでの感情を塗り潰していく。
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