第二章

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 レイピアに保留されていた青嵐が、円弧はそのままに剣身に沿って薄く伸ばされていく。剣先から柄までを覆った青嵐は、先端が鋭く尖った円錐体へと変貌した。  振り切った右腕を急いで体に引き付け、傾ぐほど大きく左肘を引く。僅かに腰を落とし、収まり切らない鎌鼬の向こう、朧気に視認できる勇次郎の左肩にぴたりとレイピアの狙いを定め―― 「はああ――ッ!」  二撃目。裂帛の気合いと共に、レイピアを撃ち出した。  レイピアの軌道上、乱雑に入り乱れていた鎌鼬が溶けるように宙に消えていく。剣先に集結されたぎちりと密度のある風が、触れたものを瞬時に解けさせ、無に帰しているのだ。  葉月の、今持てるだけの力を全て籠めた一撃が、勇次郎を貫く―― 「吠えるなよ」  つまらなさそうな声と同時に、剣先から手首、肘、肩ととてつもない反発の力が伝わって来る。ノックバックの衝撃をいなしながら、葉月は呼吸も忘れて瞠目した。
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