終章

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「お花屋さんのおにーちゃん、今いないの?」 「ぐるぐるしてほしかったのにー」  口々に騒ぎ立てる子供たち。  お花屋さんのおにーちゃんは子供たちに大人気なのだ。 「もうすぐ帰ってくると思うけど、どうかな」  と、玄関側からバイクの音が聞こえてくる。 「あ、おにーちゃんだ!」 「お花屋さんのおにーちゃん!」  子供たちはバタバタと玄関側へと駆け出した。  彩は笑みながら、玄関へと向かう。  子供たちに囲まれて、この家のもうひとりの住人が帰宅する。 「ただいま、彩」  ひまわりの花がプリントされた、可愛らしいエプロン姿の彼。  両腕に子供たちをぶら下げて、唇の端から犬歯を覗かせながら満面の笑顔を浮かべる。  最初、大柄で強面の彼にそのエプロン姿は滑稽すぎて、噴きだしてしまった彩だったが、最近やっと慣れてきた。 「おかえり、和臣」  彩も、和臣に負けないくらいの笑みを浮かべながら迎える。 「お花屋さんのおにーちゃん、ぐるぐるやってー」  子供たちから「ぐるぐる」コールが沸き起こる。 「なんだあ? またぐるぐるかよ。しゃーねえな。ほら、一列に並べ並べ」  庭先で子供たちの両脇を抱え上げた和臣が、「せーの」の合図でぐるぐると回転しだす。  途端に、弾けるような子供たちの笑い声が辺りに響き渡った。
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