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「こら、和臣。危ないから無茶しないでよ」
彩は苦笑を浮かべながら和臣を注意する。
「わーってるよ。でもさ、万が一怪我しても、ここ、病院だしな?」
「怒るからね!」
わざと眦(まなじり)を吊り上げて和臣を窘(たしな)めるが、すぐに唇が綻んでしまう。
小さく息をついた彩の顔に浮かぶもの、それは安らいだ笑みだった。
「ふふふっ、せんせ、さっきのおしえて!」
ぐるぐるが終わったさっきの女の子が、また彩の元まで戻ってきた。
「え? さっきのって……あ、ヒルガオの花言葉?」
「うん、そう!」
「確か、『優しい愛情』だったと思うよ」
「優しい……? ふふ、せんせみたいね!」
そう言って笑うと、少女はまた和臣の所へと駆けて行く。
ぐるぐるの最後尾に並んで、こちらに向かって手を振っている。
彩も手を振り返す。
昼顔の花言葉と同じ優しく穏やかな愛情が、今、自分の周りを温かく包んでいる。
それがどんなに得難く尊いものか、彩は知っていた。
彩は和臣を見つめた。
全ては彼が与えてくれるものだった。
和臣と子供たちの笑い声に、彩の唇も優しい弧を描く。
窓の縁に寄りかかって外を眺める彩の頬を、乾いた風がふわりと撫でた。
花壇の褥(しとね)で淡いピンクの昼顔が、夕焼けの光を纏(まと)い、かさりと小さな音を立てた。
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