─仮面の恋─ Act11.”吉城さん”

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冬期休暇が終わって、日常が戻ってきた。 冬期休暇中に、ガラス瓶に保管してあったドライフラワーを加工した。 ガラスボウルに移して、透明のレジンを注ぎ入れて。 硬化するのに時間がかかるから、三日に分けて作業した。 仕上がりは…紫のバラが、透き通った水の中に浮かんでいるよう。 少しだけ気泡が入っちゃったけど、それでも、すごくキレイだった。 このバラみたいに、いつまでも色褪せない関係でいられますように……。 一月第二週のある日、いつもより少し遅れてあたしは講義室に入った。 先生はまだ来てなかったけど、席はほとんど埋まってる。 後ろ寄りの窓際に空いた席を見つけて、隣に座ってるコにあたしは声をかけた。 「ここ、空いてますか」 ゆるくパーマをかけた、ショートボブの女のコ。 ホワイティアッシュの髪の下に、小さなピアスが光ってる。
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