第2話 結婚のご提案

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 可愛い女の子の写真を眺めながら、敬一の胸の中にはあたかも、嫁さんの写真うつりが悪くなくてほっとした、とでもいう近親者の安堵に似た満足感が溢れた。  写真を見る前に結婚の意志は固まっていたわけで、敬一は好美の写真を眺め返して微笑した。 「これから一生の間、よろしくお願いします!」  敬一は写真の好美に、胸の内で語りかけたのだった。  提案書は「エイプリルフールネタでないことを信じています」と結ばれていた。  真面目な提案をしてくれた彼女に、自分の誠実な気持ちをすぐにでも伝えたい。  向こうはパワーポイントを作成して提案してくれたのだからこちらも、と敬一は早速パワポで彼女に宛てる「結婚についてのご提案」の製作に取りかかったのだった。  打ち出した文字をスクリーンで確認しながら、敬一の胸が熱く疼く。  月並みで使い古されたせりふかもしれないけれど、好美の提案に真面目に、本気で応え、真剣なプロポーズをしたい。  これはエイプリルフールのジョークなどではなく、真摯な求婚だということを、一刻も早く彼女に伝えたかった。 (第3話に続く)
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