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半分フザけて書いた嫁の必須条件や嫁に期待することに対しても、実に丁寧に一つ一つの条件に応えてくれている。
「くだらない事でも一緒に笑って欲しい」と書いたのに対して、「おもしろくなければ私が笑わせます」と提案してもらったのには嬉しくなり、誰もいないオフィスで敬一は思わず一人で笑った。
母がコロコロよく笑う人だからかもしれないが、笑いの絶えない家庭に憧れる。嫁と一緒に明るい家庭を築くのが夢なのだ。
つい惹き込まれてパワーポイントをめくっていると、後半には、余命を宣告された病気の祖母にウェディング姿を見せたいと思った経緯が、本音で綴られていた。
故郷の祖母の面影がふと敬一の脳裏を掠め、「今まで遠い存在だった「結婚」がぐっと身近に感じられた」との彼女の言葉に思わずうなずいていた。
そして、敬一の胸に響いたのは、「自分の選んだ道が正解だったのかと迷うよりも、自分の選んだ道を正解にするにはどうすればいいかを考える」との彼女の姿勢だった。
「・・この結婚も、正しいのかどうかはよくわかりませんが、敬一さんが私の気持ちに応えてくれるのであれば、一緒に二人だけの正解を作っていきたいと思っています」
スクリーンを見つめながら、思わず胸に熱い想いが込み上げてくる。
どう言い現わしたらよいかわからないが、それは感動と呼ぶべき熱い塊らしく、「一緒に二人だけの正解を作ろう」との提案に、敬一は心を揺さぶられ、思わず涙ぐみそうになった。
三十年間彼女がいなかった自分に、この女性は、嫁になる、と本気で申し出てくれた。
顔も見ておらず、まだ出逢ってもいないのに、知り合ってさえいないのに、「即日OK」と力強く提案してくれた。
その瞬間に、敬一の心は決まった。
この結婚提案書をくれた好美さんという女性と結婚し、僕の力で一生大切にする!
「嫁募集」を企画した際には、万が一応募してくれた女性がいたら逢ってみて、先ずは知り合ってから、と漠然と夢想していたのだが、この結婚企画書を眼にした途端に、敬一は確信した。
彼女こそ僕の嫁さんになるべき女性で、彼女以外には考えられない、と。
どうしてそう想ったのか、理由なんて、ない。
ただ、わかったのだ、としか言いようがない。
提案書の最後には写真が添付されており、笑顔の女の子がこちらに笑いかけていた。
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