三十九

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 辰星は変わらず賭場に出て仕切りを担当しているが、その頻度は減っている。代わりに、新しい館内に再建された学問所で子どもたちを教えている。こちらの方で填功を継いだわけだ。また当然のごとく有得や宇玄、太苑の持ちかける相談に乗り、必要に応じて王宮でも働いている。  辰星は……伽絽が望んだ通り、その名を誰かに呼ばれるたびに伽絽のことを思い出す。そう、伽絽はそれを望んで……どんなときも、辰星が自分を忘れずに居てくれることを望んで、そのために辰星にその名を授けたのだ。  伽絽のことを思い、同時に辰星はいつもほろ苦く笑いながら思う。そんなことをしなくったて僕が伽絽を忘れるわけがないのに、と。  けれど、辰星が己の名を生涯大切にすることは間違いない。  そして……伸びやかな青年に育った天祐が、この太星国の王になるのはまた別のお話。  それはまたいずれ、語られよう。 〈了〉
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