エピローグ

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少し急ぎながら、目標は傾いた日が完全に落ちるまでに、僕らは頂上へ向かって歩いた。 彼女が僕に声をかけなかったら、少し考えてみたけれど、怖くなってしまってやめた。 今はどうしてあのとき終わりを待ち焦がれていたのかが思い出せない。 次の世界をただ待っていただけなんて、つまらなさすぎるのに、どうしてそんなことを考えていたんだろう? マイはきっと始めから知っていたに違いない。 僕らの記憶は既に消えてしまっているけれど、マイは無意識のうちに、心のどこかでそれを理解していたんだろう。 でも知るのが怖かった。一人で孤独のなかで、それを見るのは怖くて、寂しかったんだと思う。 僕を見つけたとき彼女はこう言った「君がいてくれて良かった」と、あのときの彼女の不安そうな声を聞いて僕は目を覚ました。 僕とは違ってマイは終わることへの覚悟ができていなかったのか。それとも…始めから僕を探していたのかも。 僕がまだ存在している。そんなことすら本能か何かがマイに知らせていたのかもしれない。 でないと、終わってしまった世界で誰かを探すなんてことするはずがない。 もうすぐで終わる。 一歩一歩進む毎に、一秒経つ度に、それを実感する。 日が傾いて、太陽が、空が赤色に変わっていき、 空の奥の光は更に量を増し、光の大きさが大きくなっていく。 そんな景色を、最後の景色を楽しみながら、不安そうなマイの手を引いて僕らはたどり着いた。 そこはちょうど木が生えておらず、広場になっている。 まるで僕らを待っていたかのように開けているその場所、ちょうど良いところに木が生えていて、僕らはそれを背もたれにして座り込んだ。 頂上にたどり着いてから僕らはなにも言えずにいた。 喜びや達成感よりも、目の前に広がるすべての終わりを目の当たりにして、理解した、終わりなのを、僕らが目指していたのは終末、ずっと理解していたはずなのに、心のどこかでいつのまにか否定していたんだ。 まだ続くと、そんなあり得ないことを信じていた。 まるで今までのすべてを集めたかのような景色。 綺麗、幻想的、不思議、そんな言葉ではとても表現しきれないほどの、壮大で…考えていると、涙が溢れてきて、視界が歪んだ。 悲しい訳じゃないのに、どうしてか涙が止まらない。
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