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暗闇のなかで、なにかが動いた。
建物が壊れたのだろうか?それとも僕の終わりが近いのだろうか?
今ここで目を覚ませばまた心がキュウと締め付けられるような感情が襲いかかってくるだろう。
僕にとってそれは気持ちのいいことではない、 ならば僕は目を覚ますべきではないハズだ。
それとももしかすると既に世界は終わりを迎えて、新しいなにかが芽吹いたのだろうか?もしかしたら今目を覚まさなければ僕は二度と目覚めることは無いのかもしれない。
「起きて、ねえ。」
声が聞こえた。
この世界は終わってしまった。誰もいない。それは僕が自分で見て回った。間違いない。
だったらこの声の正体はきっと始まった世界での芽吹いた何かの声なのかもしれない。
「起きて。」
少しだけ泣きそうな声だ。きっと始まったばかりで寂しいのだろう。
それは僕も同じだろう、始まったばかりで1人ポツリと立っていたら誰だって寂しいに決まっている。
僕は薄目を開けて、声の主を見上げた。
「起きてくれた…。」
この世界は終わってしまっていた。いや、今が終わっている途中だろうか?酷く残念な気持ちが僕を襲った。
何も始まってはいない。たまたま残っていた僕と同じ存在がたまたま僕を見つけて、僕を起こしたのだろう。
終わる覚悟をしていたのに、次の始まりを楽しみにしていたのに。この女の子は余計なことをしてくれた。
「なに?」
少しだけ不機嫌な声を彼女に出した。
なのに彼女は嬉しそうにニコニコしながら僕の手を取った。
「寂しくて、不安で仕方なかったの。
心がキュウって締め付けられて、終わりが怖くて、たまらなかった。」
この子は何を言っているのだろうか。
終わりがくるのは当然の事なのになぜそこまで怖がるのだろうか。
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