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ユウ「どうして誰もいないんだろう。」
マイ「え?」
ユウ「まるでさっきまで人がいたような気がする…」
確信はなかったけれど、そんな気がした。
マイは頬に指を当て、んー、と声を出しながら考えている。
でも出会ってから話していて何度もこんなやり取りをしたけれど、だいたいよくわからない答えが返ってくるのだ。
マイ「終わっちゃったもんね。」
ユウ「うん」
マイ「なんで終わっちゃったんだろうねえ。」
もはや答えにすらなっていなかった。
というか質問で返されるとは思わなかった、でも確かに僕達はこの世界の終わりの理由を知らない。
これから何が起こるのかも知らないし、何が来たら終わりなのかもわからない。
ただ何となく、終わったということは本能が告げていた。
どうして僕達はまだ残っているのかもわからない、考え出すとどんどん疑問があふれでてくる。
頭では理解していた、考えるのは無駄だと、でも、好奇心がそれを無視して考察を産み出す。
マイ「…考えすぎだよ。」
僕の考えを見通したかのように彼女が言った。
マイ「考えなくてもいずれわかるよ、そんな気がする。」
なんの根拠もない彼女の言葉、しかし今はその言葉が真実のような気もする。そもそも終わることがなぜわかるのかすら僕らにはわからないんだから。
ユウ「うん、考えるのはやめようっと」
マイ「それがいいと思うよ。」
誰もいない村を歩き回り、一回り見るとまた僕らは山に向かって歩き出した。
そうだ、僕らはあの山の天辺で終わりを迎えるんだ、そうに違いない。
本当に何となくだけどそんな気がした。
マイ「手、繋ご。」
彼女が僕に手を差し出し言った。
急な提案だったけど僕はその手を握る。
彼女の手から柔らかい暖かさが伝わってきて、そして何かが心を包み込む、そんな感情が膨れ上がってきた。
何だろうか、この感覚は?
懐かしくてそして、優しい感覚。
僕がそんなことを思っていると彼女が安心したように大きく息を吐いた。
マイ「よかった、暖かい。もしかしたら私達死んじゃってるのかなって思っちゃって。」
ユウ「死んじゃったら僕達はもうここにはいないよ。」
だけど彼女の発言で気がついた。僕も何かに安心していたのだろう。彼女の温もりが何かとても特別なものに感じたのも事実だ。
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