エピローグ

7/10

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
なんだかはじめての出来事ばかりだ。 夜になると地面が輝き、昼になっても空に星が見える。 まるでさっきまで誰かがいたかのような不思議な家の中、そして彼女の手の温かさ。 でももうすぐ終わってしまう。 そう考えたら少し悲しい。誰かに伝えたくても伝えられない。この光景の素晴らしさはきっと見ないとわからない。 言葉で説明するのはきっと不可能なほどに不思議で幻想的な光景だ。 ふと耳を済ませば、僕たちの歩く音と、風の音以外にも何か聞こえてきた。 ユウ「なんだろ、この音。」 マイ「向こうの方からだね。」 少し臭いもしてきた。 一度嗅いだことのある気がする臭いだ。 なんという臭いだったっけ? とても自然な臭いだけど、森や山とは違う、木や土の臭いじゃない。なにか? マイ「見えた。」 ユウ「うわぁ…すごいや。」 音のなる方向へ歩き、そして僕らの視界に広がったのは水だった。 先程の香りは…そう、潮の香りだった。僕らの目の前には広大な海が広がっている。 マイ「ねえ、よく見て?水の中光ってる。」 じっと見ると確かに光っていた。太陽の光に反射しているわけではなく、水の中で何か粒々がキラキラと光ながら波に揉まれながら渦巻いていた。 光の量はとても多くて、まるで天気がいい日の星空のようだ。 マイ「海の中には光る砂がいっぱいなんだね。」 ユウ「マイはもしかして海を見るのはじめて?」 マイ「うん。だから今とっても不思議な気分。こんなたくさんの水見たことない。」 もしかしたらマイは山の方から来たのかもしれない。僕は海というものを見たことがあるんだと思う。海を見てもそれほどの感動はなかった。 だけどマイは海の中の光のように目をキラキラさせている。 僕ももう一度海を見てみると少し違和感を感じた。 なんだか海が近い。よくわからないけれど、この海は僕の知っている海じゃなかった。 僕の知っている海は砂浜の先に海がある、後は崖の先が海だったりもするが、ここの海はどれも違う、崖ににているけれど、海はもうすぐで手が届くんじゃないかと思えるほど近い。 マイ「また何悩んでるの?」 またまた考え込んでしまった僕はマイの声を聞いて我に帰った。 ユウ「僕の知らない海もあるんだなって、少し驚いてたんだ。」 マイ「そうなんだ、うん、やっぱり世界って広いんだね。」 僕達はしばらく太陽の光のキラキラと水の中のキラキラという不思議な景色を眺めていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加