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「ふ──っ……」 「お疲れさま~」 「あれ? 来てたの?」 「うん。今日、君が執刀する手術があるって聞いたから、興味があって。無事終わった?」 「時間はかかったけど、成功したよ」 「さすがだね。それじゃあ、患者さんは元気になるね」 「そう願いたいところだが。術後の経過──つまり体力の戻り具合や、リハビリの進行具合は、クランケごと個人差が出てしまうものだ。本人にやる気がなければ、どうにもならないよ」 「でも、君ほどの人が執刀して、しかも成功したんだから、それだけで希望が持てるよね」 「嬉しいこと言ってくれるじゃない。クランケからしたら、俺がどんな医者だろうが、大して関係ない時もあるから、微妙なところだけどね」 「励ましてあげてよ。まだまだ生きられる人が、絶望のために命を縮めるのは、悲しいよ」 「そんな顔しないで。俺も医者のはしくれ。一度預かったクランケは、責任持って最後まで診るよ。まだ死ぬ時ではない人を、いたずらに死なせたりしないよ。医者の俺の時は」 「最後が怖い」 「にしても、その姿のまんま来るとはねー。ごっこ遊びに、どっぷり浸かってる子どもみたいだよ」 「大人バージョンで、このナリだと、かなり痛い人になっちゃうんだもん。仕方ないじゃない。かと言って、変装するのなんか面倒臭いし」 「そこは賛成。悪いことしてるわけでもないのに、変装しなくちゃいけない道理もない」 「見てくれで人を判断してしまうのが、人間の特徴的な生態傾向のひとつだよね」 「見た目なんか大した問題にならないと言い切れるほど、悟れないからこそ、現世は修行の場なのかもね」 「神様の外見って、異形な場合も多いもんね。ナイアルラトホテップとか」 「カーリーもなかなか、インパクトの強い風貌だね」 「実際に手が何本もあったら、便利になりそうなんだけどなー」 「そのためには、脳のキャパシティを広げないといけなくなるから、今より人間の頭蓋骨のサイズが増すよ。頭部だけ、ぼこっと」 「そうしたら、それを支えるために頚部も発達する?」 「しないと折れちゃうね」 「それに合わせて、更に色んなところのサイズが変わってくると考えると……」 「間違いなく、今の人間なら嫌悪するような姿に進化するだろう」  
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