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ナフアの弁により、失意のままレンは兵らに連行され、拷問室の隣に併設されている地下牢へと投げ込まれた。
ショック状態のティルアは駆け付けたカルピナがすぐにも担架を手配し、部屋へと付き添っていった。
ティルアの姿を目にした瞬間、口元を押さえ嗚咽を漏らしたカルピナの表情に、ギルバードもアザゼルも何も言えずに黙る他なかった。
深夜帯ということもあり、寝所のイアン王にすぐに伝えられることはなく、翌日へと持ち越される運びとなった。
騒然となった現場はそれ以上の展開を迎えることなく、一時的な収拾を辿る。
翌日にでも、現場に居合わせたギルバードとアザゼルはイアン王の前にて重要参考証人として招聘され、話を聞かれることとなるだろう。
未だ使用人らが動き回る現場の湯浴み場。
ギルバードとアザゼルが眉間に皺を寄せながら重い足取りで外に出た。
「何が……何があったんだ!?」
外套を羽織ったアスティスが待ち構えていたように二人の前に姿を見せた。
「アザゼル、おれは今日はもう休む。
この男と話をしていると気分が悪くなるのでな。
明日のイアン王との接見が始まる前に……おれはレンに会いに行くつもりだ。
来る気があるのならお前も来たらいい」
「ええ、是非ご同行させていただきます、ギルバード様」
ギルバードはアスティスの顔を見ることもなく、すぐにその場を立ち去った。
「アザゼル、一体何が……」
アザゼルはその声に応えることなく押し黙ったまま、じっとアスティスの姿を眺めた。
全てを見透かすように、何か失望したような醒めた眼で。
「アスティス様、申し訳ありません。
もう私はアスティス様についていく自信がありません。
今この瞬間にも、出来ることならあなたを殴ってしまいたい……!
――そんな心のまま、仕えるわけには参りませんから」
「――――!!」
「……ナフア姫が何らかの形でレン殿を利用し、ティルア様を……襲わせました。
ティルア様は……、三年前のあなたから受けた傷が元で――」
言葉に詰まり、途切れさせたアザゼルはアスティスから視線を逸らし、下を向いた。
「……そうか、分かった」
インディゴブルーが疲れ果てたようにそう発すると、アザゼルは一礼し踵を返した。
残ったものは、宵。
三年前のあの時と何ら変わらない、満天の星空だった。
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