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レンの顔がティルアのすぐそばにある。
被さった唇からゆっくりと入り込むレンの熱さにとろけそうになりながら、ティルアは震える手でレンの首に手を回す。
ティルアの身体を気遣うようにゆっくりとゆっくりと動きを這わせる優しいキスだった。
そっと離れるとレンはティルアの身体を抱き起こした。
露天の石畳に敷かれたバスタオル一枚――愛を育む場にしてはあまりに粗末すぎる揺りかごにレンはティルアの傷付いた背を向けていたくなかったからだった。
胡座をかいて座るレンの膝に向かい合わせにさせたティルアは胸の中へと優しく抱き寄せられた。
レンの鼓動の速さに気付き、顔を赤く染め、レンの胸元に顔を埋めた。
回した腕をぎゅっと強くする。
「っ……ああもう、いちいち可愛いな」
レンはそんなティルアをぎゅーーっと力強く抱き締めた。
「……うっ、レ、レン、くるし――っ!」
その時だった。
ティルアの視界にナフアの足が飛び込んできた。
避ける間などなかった。
ナフアの足がティルアの顔を蹴ったのだ。
「!? ティルア!」
レンはすぐに腕をほどき、後方のナフアへと怒りをぶつけた。
「なっ――なぜティルアを蹴った!?
俺はお前の言う通り、ティルアを……!」
「あらあら、お話が違うでしょう、聞こえませんでしたの?
わたくしは襲いなさいと言ったのです。
そこには気遣いも甘さも一切禁止させていただくわ」
「……っ、汚な――」
「レン……いい。
姉上の……言う通りに――するんだ」
腫れた左頬をさすりながら、ティルアは諦めたように弱々しく発した。
「絶対間違ってる……、こんなの……俺は――っ」
「それで、レンの……居場所が護れるなら。
ふ、ふふ、安い……投資だよ」
「バカやろ、こんな時に。
う、うわぁああああっ!」
レンの叫びが湯室にこだました。
「ああああぁぁっ!」
ティルアの中をレンの指先が淫らな音を立てて這い回る。
優しさなど全くない、激しい指先が花びらをちぎるように差し込まれる。
ティルアは逃げるように身を捩らせた。
涙で顔を濡らすティルアの瞳にレンの伏せられた瞳が映りこんだ。
食いしばった唇の端から血が滲んでいる。
レンも苦しんでいる――そう感じたティルアはレンのもう一方の手をきゅっと握った。
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