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「おかしいとは、どういうことですか?」
今度は丸尾が手帳を片手に聞き返す。
「私たちが通報を聞いて現場に行ったとき、あの男は遺体をただ見下ろしていたんです。いたって冷静に、まるで警察のことを待っていたかのように。それに男の白いワイシャツには血がついた跡がありました。おそらく被害者の血液だと思われます」
丸尾は真面目にペンをはしらせる。今野は顎髭を触りながらその丸尾を見ている。
「現場には凶器がなく、男も怪しいものは所持していませんでした。しかし、おかしいというのはそれだけではないんです。あの男、ずっと大きめのマスクをしているのですが、そのマスク越しでも辛うじてわかるくらいに笑っているんです、常に」
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