第1章

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交番の中で2人の警察官と対峙してる白のワイシャツを着た男。黒がかった薄い茶色の髪。顔は大きなマスクに覆われており、わかりづらいが交番の警察官が言っていたとおり明らかに笑っている。白いワイシャツの胸元は赤い血痕がまだ新しく残っていた。 「そのマスクは取れないのか?」 今野は恐る恐る尋ねる。さすがの今野でも躊躇いというのが存在した。 「警察の人に言われたら取らないとは言えないのでとりますが、笑わないでくださいね」 声変わりをして間もないといったような綺麗な声。マスクで隠されていない澄んだ目からも実年齢よりも若く見られるように思う。 笑わないでくださいね、という一言はこの後見せるものを予感させるような気がした。 「あまり人前では見せたくないのですが、仕方ないですよね」 自分に言い聞かせるように呟き、左耳の紐からゆっくりと外す。隠されていた口は実は耳まで裂けていて口裂け男でしたっというオチを期待してしまった。 マスクが外されて口が露わになった。はっきりと口の両端が口角ごと上がっている。まるでその状態が普通であるかのような不自然な笑顔が隠されていた。本当は笑っていないのか、明らかに目は笑っていない。口だけがまるで愛想笑いをするかのように笑っていた。 「私の名前は、上岡亮です。私はこの状態が普通なんです。マスクつけていいですか? 私は犯人の顔を見ています。犯行現場の付近で犯人と思わしき人物とぶつかりました。この血はそのとき付いたものと思われます。警官さん、絶対に犯人を捕まえてください」
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