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視界の隅に映る彼女
八月も半ばに差し掛かったある日の午後。今日も彼女は、僕の視界の隅にいる。
すごく集中した面持ちで先を見据えている姿は凜、としていて、その周囲から音が消失していた。
外では油蝉が狂ったように鳴いているはずなのに――音が消失した……なんて、おかしな例えかもしれない。
彼女の周囲だけ音を撥(は)ね除ける透明なカーテンがあるかのような錯覚。
一瞬だけ、彼女と目が合う。気のせいだろうか……少し微笑んで見えた。
――ターッン!
頭に強い衝撃が走る。
僕は彼女が放った竹刀で打ち抜かれ、身体に電気が走るのを感じた。
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