苦しいときこそ×××

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夢を見た。 どこまでも続いている青い空。ふりそそぐ陽射し。 俺が立っている大地。前に行った公園の地面の感覚に似ている。 後ろを振り返れば、波を打つ海。どこまでも続く水平線が広がっていた。 遠くに見える山々のてっぺん付近には、まだ雪が積もっている。 隣には女の子が立っている。俺と同じ山を見ているようだ。 何をするでもなく、俺は立ち尽くす。呼吸はしていたかもしれない。もう目が覚めているからいささか記憶が薄れてしまった。 『-----------』 聞こえない。隣の女は口を動かしている。なにかを喋っているのだろうが、あいにく何も聞こえてこない。 よくよく考えてみると、風の音も波の音も、地面を足でこする音も聞こえていない。 奇妙な感覚だった。風が頬を撫でる感覚はあるのに聞こえない。足の裏の感覚はあるのに聞こえない。 (まあ、夢なんてこんなもんか・・・・・・) そこから先のことは何も知らない。隣の女が歩き出したと思ったら、いきなり目が覚めたからだ。 「ふぅ・・・・・・」 俺の名前は、山下星彦。5人兄弟の次男。 察しのいいやつは気づいたと思うが、俺の名前は七夕のちんこがついてる方のやつの名前を逆さまにしたものだ。小学生の頃母さんがそう言っていた。
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