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1階のリビングに降りると、我が家の大黒柱である父、山下夢道と、母である山下里奈が大空作の朝食をつついていた。
うちの両親は共働きであるため、時間のない平日の朝は大空が朝食を作るのだ。
「お、起きたか。ほれお前もはやく食え」
「星彦おはよう。じゃあ父さんはそろそろ出るかな」
「はいよ。いってらっさい」
朝の挨拶もほどほどに、父さんは会社へ出かけていった。
ちなみに口の悪いほうが母さんね。なんでこういう口調なのかは、知らない。聞くがめんどくさいわけじゃないぞ。
「あれ。兄ちゃんは?今日が初出勤とか言ってなかったっけ」
「さっき出ていった。近所に会社の人の家があるとかで同伴出勤するらしい」
「そんな風俗みたいな言い方すんなよ。ただの機械屋だろうが」
兄ちゃんこと俺の兄、山下家長男、山下大地。現在23歳。大学を1浪して、今日から大手機械系メーカーに務めることになったエリートサラリーマン。
憧れの先輩を追いかけ続けてはや8年。同じ高校、同じ大学に通い、無い頭を絞りに絞ってついには同じ会社にまで務めることになった大馬鹿野郎。
給料がいいので誰も文句は言わないが、その軽いストーカー気質に皆少々引いているのは言うまでもない。
「いいかげんあいつはアタックを仕掛けないのか。いつすみれが他の男に取られるかわかったもんじゃない」
「まあ、あの人はあの人で、うん。アレだし。大丈夫なんじゃない?」
「だといいんだけどな。そろそろアタシもでる。講義に遅刻するなよ」
そう言って母さんは、すでに食べ終えていた食器を片付け、車のキーを片手に出かけていった。
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