第1章 紅き炎の乙女  壱

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「痛いじゃないですか!」 「うるせい!何度言わせばお前の脳は理解すんだ!?えぇ!!?」 「あ、あの…どうかしたんですか?」 おずおずと後藤に質問をする少女。 「すまんな嬢ちゃん。コスモスは秋の花なんだ。なのに…この馬鹿は何度も何度も…!」 「秋の花?なのに、何でお店にあるんですか?」 「あぁ。そこの馬鹿のお蔭さ。こいつ、花の温度調整が得意でね。」 「そうなんです。ってなわけで、コスモス御一ついかがですか?」 再び綺麗なツッコミが昴の頭部を直撃した。 「ふふ・・。じゃ、コスモスをください。」 「へ?いいのかい、嬢ちゃん?」 「おすすめ、なんでしょ?」 柔らかい微笑みを浮かべ、昴に問いかける少女。 しばし、キョトンとする昴であったが、直ぐに笑顔で声をだした。 「はい!」 少女に指定された20本のコスモスを慣れた手さばきで纏めていく。 代金を受け、商品であるコスモスを渡す。 「あ・・甘く良い匂いですね。まるでチョコみたいな。」 「えぇ。その花はチョコレートコスモス。チョコレートのような香りが特徴なんですよ。」 「チョコレートコスモスか・・。」 瞳を閉じ、甘く香るコスモスを鼻で感じる少女。 胸がいい匂いで満たされる。 「いい買い物ができたわ。ありがとう、店員さん。」 「いえいえ。またのご利用お待ちしています。」 「また来てくれよな、嬢ちゃん。」 「えぇ。また買いに来ます。」 そうして店を出て行こうとする彼女を店先まで見送る。 互いに礼を述べ合い、去っていく彼女の背中が小さくなってから店のシャッターを下した。 「ふぅ~。さて・・帰るか。」 場所は複数のロッカーがある小部屋。 先ほどの少女と同じく、グレイのブレザーの制服に着替えを済ませると後藤に挨拶するため、店内へ。 店のレジ横で、売上計算をしている後藤に「御先でーす。」っと軽く挨拶をする。 いつもならば、ここで「おう。」と言われ終わるのだが今日は違っていた。 「昴。最近の噂は聞いているか?」 お金から目を離さずに、昴へ問いかける。 しばし、沈黙が続くと昴は、フッと苦笑いを浮かべる。 「・・もう、俺には関係ありませんよ。」 「そうか・・。そうだな。」 「はい。では。」 「おう。気をつけてな。」
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