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「あっははは!君は馬鹿と言うよりマヌケだな!」
事の顛末をきいた彼女は現在、絶賛爆笑中だ。
ひーひーと呼吸困難を起こし、目尻には涙。
「仕方ないじゃん。一般人だと思ったんだから。」
「だとしてもだ。」
つい今まで笑っていた彼女の顔が真面目なモノへと変わる。
「雪風も言っていただろう?妖魔は担当の霊滅師共に任せておけばいい。」
「わかっている。雪風が、本当は俺の身を案じている事も…」
「ならば、私はもう何も言わん。…雪風~晩御飯は何だぁ?」
食卓のあるリビングに消える明。
昴は自身の開かれた右手を見つめる。
――そして蘇える悪夢。
真っ赤な血に染まった街。
朱く燃える建物。
『…お願い生きて!』
「―さん……兄さん!」
「っ!?なんだ雪風か。」
「なんだじゃありません。晩御飯できてますよ?」
「あぁすまん。直ぐに行くよ。」
不満げにする雪風の頭をポンポンと軽く触り、リビングに足を踏み入れる。
まず目に入ってきたのは瓶ビールをラッパ飲みする明だった。
パッと見、美人な彼女だけに何度見てもその姿にはガッカリする昴。
対して雪風は気にも留めず、さっさと食事を始めていた。
「いただきます。」
召し上がれ。
そう言葉にし、優しく微笑む雪風。
本当に自分には勿体無い、出来た妹だと彼は思った。
今晩のメニューの主役は豚の角煮だった。
「…清野先生。うちの高校に霊滅師っている?」
明は瓶ビールから口を離す。
「なんだ藪から棒に?」
「いや、今日助けた霊滅師は俺と同じ天月高校の制服だったんだ。」
「なるほど…。いや、今日までは霊滅師は私以外に居なかった。しかし明日、転入生がやってくる。」
「じゃ~その子が今日の霊滅師か。しかも炎術師の。」
月を背にした彼女の姿が脳裏を掠めた。
ふと昴は右方向から視線を感じた。
視線を移すと、唇を尖らした妹の姿がそこにはあった。
「大丈夫だよ。」
何の根拠も無くそう口にする昴に、雪風が何か言おうとするが…
「逢ったら全力で逃げるから!」
「何にも解決していませんよ!?」
親指を立てる兄に、妹はツッコミを入れるのであった。
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