第1章 紅き炎の乙女  壱

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「あっははは!君は馬鹿と言うよりマヌケだな!」 事の顛末をきいた彼女は現在、絶賛爆笑中だ。 ひーひーと呼吸困難を起こし、目尻には涙。 「仕方ないじゃん。一般人だと思ったんだから。」 「だとしてもだ。」 つい今まで笑っていた彼女の顔が真面目なモノへと変わる。 「雪風も言っていただろう?妖魔は担当の霊滅師共に任せておけばいい。」 「わかっている。雪風が、本当は俺の身を案じている事も…」 「ならば、私はもう何も言わん。…雪風~晩御飯は何だぁ?」 食卓のあるリビングに消える明。 昴は自身の開かれた右手を見つめる。 ――そして蘇える悪夢。 真っ赤な血に染まった街。 朱く燃える建物。 『…お願い生きて!』 「―さん……兄さん!」 「っ!?なんだ雪風か。」 「なんだじゃありません。晩御飯できてますよ?」 「あぁすまん。直ぐに行くよ。」 不満げにする雪風の頭をポンポンと軽く触り、リビングに足を踏み入れる。 まず目に入ってきたのは瓶ビールをラッパ飲みする明だった。 パッと見、美人な彼女だけに何度見てもその姿にはガッカリする昴。 対して雪風は気にも留めず、さっさと食事を始めていた。 「いただきます。」 召し上がれ。 そう言葉にし、優しく微笑む雪風。 本当に自分には勿体無い、出来た妹だと彼は思った。 今晩のメニューの主役は豚の角煮だった。 「…清野先生。うちの高校に霊滅師っている?」 明は瓶ビールから口を離す。 「なんだ藪から棒に?」 「いや、今日助けた霊滅師は俺と同じ天月高校の制服だったんだ。」 「なるほど…。いや、今日までは霊滅師は私以外に居なかった。しかし明日、転入生がやってくる。」 「じゃ~その子が今日の霊滅師か。しかも炎術師の。」 月を背にした彼女の姿が脳裏を掠めた。 ふと昴は右方向から視線を感じた。 視線を移すと、唇を尖らした妹の姿がそこにはあった。 「大丈夫だよ。」 何の根拠も無くそう口にする昴に、雪風が何か言おうとするが… 「逢ったら全力で逃げるから!」 「何にも解決していませんよ!?」 親指を立てる兄に、妹はツッコミを入れるのであった。
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