第1章 紅き炎の乙女  壱

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時刻は午前九時前。 天月高校の2年2組の教室内で冷汗をたっぷり掻いている人物が居た。 昴だった。 彼の視線の先― 教卓の横にその原因が居た。 「えー転入生だ。ほれ、自己紹介しろ。」 全くやる気を感じさせない明の隣に立つ少女。 彼女は黒板に丁寧且つ、綺麗な字で文字を書く。 そして、笑顔で振り返り、明るく自己紹介を始めた。 「今日からこのクラスに転入してきました。来栖朱音[くるすあかね]です。よろしく―」 「あ。」 一瞬、昴と視線が交わった。 「お願いします!」 彼女は笑顔だ。 しかし、視線の交わったあの一瞬だけ、冷たく怒気を含んだ瞳で昴を見ていた。 よし…仕方がない。っと心で自分を納得させ、椅子から立ち上がる。 「先生…腹痛と頭痛と殺気がヤバいので保険室に行ってきます!!」 「あっ!?」 彼は妹に宣言した通り、朱音と逢った為逃走を開始。 もの凄い速さで教室内から逃げ出したのだった。 「よーし教科書開けぇ。」 「普通に授業始める!?」 昴を気にも留めず、授業を始めた明に朱音はクラス代表でツッコミを入れていた。
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